そして12月24日……
――クリスマス・イヴ
それは恋人たちの日。
街は幸せそうな恋人達であふれ、空に舞う白い吐息とは反対に彼らは皆、暖かそうだった。
「あっ、あたしこれ観たい!」
そう言って萌が立ち止まったのは、この前澪と観るはずだった"Refrain love"のポスターの前だった。
「……リフレイン・ラヴか……」
不意に、先日の澪とのやりとりが回想される……
「リフレイン・ラブ?」
「うんっ! 私たちが生まれた頃の映画なんだけど、今度リバイバル上映するんだって。」
「うんとね〜、『幼い頃から同じ環境で育った二人のラブストーリー。大人になるにつれて大きくなる想いから目をそらし続ける二人を描く。』だってさ」
「ふ〜ん。いいんじゃない。」
「何それ〜? もっと楽しみにしてよぉ。」
「……わぁ、早く見てぇ〜!」
「えへへっ、でしょぉ?」
「なんでっ? 昨日これ観るって約束したじゃない!」
「だけどさ〜、やっぱそんな昔のより今ヒットしてるやつにしようぜ〜。」
「もういいっ! 航ちゃんのばか!」
「!?」
「先生、どうしたの? ボーっとしちゃってぇ。」
「えっ? ああ、ごめん。」
「ねぇ、これでいい?」
「…………」
「……ごめん。この映画、友達と観る約束してたんだ。」
「そっかぁ、じゃあこっちのならいい?」
「うん、いいよ。ごめんね……」
澪が起きたとき部屋にはすでに航の姿はなかった。
リビングのテーブルの上を見ると、焦げたベーコンとカリカリのスクランブルエッグ、そしてサラダがラップをかけて置かれていた。
出かける前に航が用意しておいた、澪のための朝食だった。
気まずいままの航は、澪と顔を合わせないために澪よりも一足先に家を出たようだった。
「……行ってきます。」
澪はなぜかいつもよりも広く感じる誰もいない部屋にそう告げてゆっくりとドアを閉めた……
「……ばか。」
その言葉は航に対して言ったのではなく、素直になれない自分自身に投げかけたものだった……
「けっこう面白かったね。」
外に出ると、もう陽が沈み冬の長い夜が始まっていた。
「うん、最後なんて涙こらえるのが大変だったよ。」
「あたしもだよ〜でも結局泣いちゃったんだぁ。」
航にとって萌と一緒に過ごす時間はとても楽しかった。
しかし、なぜか心の中にはもやがかかっていて、この時間を心から楽しむことができない……
まだ映画の世界から抜け出せない二人、寄り添って歩いているうちにお互いの手と手がぶつかり合い自然と手を握り合っていた……
「……あったかい。」
「んっ?」
「ううんっ、なんにもだよっ! それよりもお腹減っちゃったな!」
「そうだね、そろそろ何か食べよっか。」
「うんっ!」
店内には見なれた姿があった。
いや、違う。見間違えだろう。
いるわけがない!
「!? 航ちゃん……」
「……澪。」
最悪だ。
コートを脱いでいた澪は、胸元の開けたチューブトップの赤いドレス姿だった……
それは
あの時のドレス。